目撃場所/コンビニエンスストア入口


床の滑りやすさを警告しているピクトさんである。この直後、ピクトさんは腰をしたたかに打つか、さもなくば尻もちをつくことになるだろう。しかも滑ったということは、床が濡れているということだ。これはかなりブルーである。仕事かボランティアかは知らないが、ピクトさんにはつくづく同情する。大人になるとあまり転ぶという失敗をしなくなるが、それだけに転んでしまった時のショックは大きい。特にまわりに人がいる時は非常に恥ずかしい思いをすることになる。連れと一緒であれば「転んじゃった」と笑えばそれで済むが、一人だとそうはいかない。真顔で体勢を立て直す時の、あのやるせなさ。なるべく平静を装ってはいるが、「大人なのに転んでしまった」ことへの動揺は大きい。実に切ない瞬間である。いや、それより切ないのは、むしろ「転びそうになった時」だろう。素早く元の体勢に戻りながら、まるでそれを無かったことのように振る舞ってしまう自分。直立歩行して以来の、人類の宿命なのかもしれない。


四本の足を持つ馬でさえつまずく。
イギリスの諺