目撃場所/デパート内 エスカレーター


三角形のプラスチックボードが、ピクトさんを直撃している。しかも後頭部。痛そうだ。エスカレーターの手すりから身を乗り出すと、このような目に遭うのである。しかしよく考えるとこのシールが貼ってあるのは他でもないプラスチックボード自体なのだから、警告のタイミングが遅すぎるのではないか。もっと早い段階、エスカレーターの乗り口あたりで教えてほしい。それにしてもピクトさんはなぜ、こんなにまで身を乗り出してしまったのだろうか。おそらく階下に偶然知人でも見つけたのだろう。「お。あれ佐々木じゃない? おーい、佐々木〜」などと声をかけていたに違いない。しかし佐々木は気付かない。身を乗り出し、なおも佐々木を呼ぶピクトさん。それでも佐々木は気付かない。ますますムキになって佐々木を呼ぶピクトさん。ガツン、と後頭部に走る鈍い衝撃。頭を押さえてうずくまるピクトさん。後ろからはクスクスという笑い声。立ち直るのに時間がかかりそうだ。


待っていたことはやって来ず、思いがけないことがやって来る。
エウリピデス