団地・ダンメン・ピクトさん


今回は特別編ということで、先日大阪で開催したイベント、DDPのレポートをお送りします。最初はイベントの内容を説明するようなレポートにしようと思っていたのですが、ふりかえると当日の我々のドタバタぶりを伝えたほうが面白いんじゃないかと思い、ドキュメント風に書いてみました。それではどうぞ。

ー 2004年10月23日 大阪中崎町 コモンカフェ ー


■「よくわからへん」イベント、準備開始。



4時前にコモンカフェに到着すると、ちょうどダンメンの吉永氏も来たばかりだった。団地の総裁と長野氏はまだ来ていないが、先に会場づくりを始めることにする。しかしその時点までコモンカフェは通常営業をしていたので、まだ残っているお客さんが一組いた。二人連れの女性だった。

「あのー、晩からイベントがあるのでこれから準備するんですよ。申し訳ありませんが、そろそろ・・・」と恐縮しながらお願いすると、「どんなイベントですか」とお客さん。

吉永氏が「こんなのです」と言ってDDPのフライヤーを見せる。その人はしばらくフライヤーを眺めていたが、
「ふーん。よくわからへんねえ」と言って首をかしげていた。

・・・

薄々感じてはいたけど、
普通の人にはまったく理解されないことを
我々は今からやろうとしているのだなあ、
と思いながら私は机を運び始めた。

そして団地の総裁&長野氏が到着。みんなで準備に取りかかる。


■はたして何人来るのか。

裏の倉庫から椅子を出しながら、いくつ並べるのが適当かを話し合う。「あまりたくさん並べて、お客さんスカスカだったら恥ずかしいよね」などと言いながら、とりあえず36席並べた。そんな数では全然足りなくなることなど、この時の我々には知るよしもなかった。




■超オリジナルTシャツ。

続いてパソコンをプロジェクターにつなぎ、この日のためにつくったオリジナルTシャツを壁に飾る。団地・ダンメン、ピクトさん、それぞれ4種ずつ、計12枚。飾り終えると、その光景に思わず吹き出してしまった。
(なにをつくってるんだ我々は・・・)
オリジナリティ全開である。このTシャツは団地の総裁がつくったものだ。我々的には素晴らしい出来だと思うのだが、客観的に見るとどれも着て歩くのはものすごく勇気がいると思う。「1000円」と書いた値札を付けながら、「きっと買う人なんかいないよねえ。売れ残ったらお互いで買い取って持って帰ろう」と話し合っていた。



今回はイベントに必要なものをみんなで手分けして作成した。私は周辺のお店に置いてもらうフライヤーと当日来場者に配るドリンク券、プログラム表をつくった。

この情熱を仕事にも活かせないものか。




■鶏ごぼう巻き丼の行列。

やっと準備が終わった。6時半の開場までまだ時間があるので、4人で近所のカフェへ腹ごしらえに行く。4人ともメニューを見るなり「鶏ごぼう巻き丼」を注文。こんなところで気が合う男たち。

それぞれの活動の裏話などを話し合い、大いに盛り上がる。なかなか来ない鶏ごぼう巻き丼のことなどお構いなしに話は弾んだ。やがて鶏ごぼう巻き丼が運ばれてきて、ふと時計を見ると・・・
6時半!
もう開場時間じゃないか。
ほぼ同時に吉永さんの携帯が鳴る。
コモンカフェに残っている妹さんからだ。
「お客さんがたくさん来ている。すぐ戻ってきてくれ」という連絡だった。
たくさん?
たくさんってどのくらいだろう。
「す、すみません、これ持って行っていいですか。後で返しに来ます」
お店の人にそう言って我々は鶏ごぼう巻き丼を持ち、店を出た。外はもう日が暮れている。

手にドンブリを持った4人の男が行列をつくって夜の街を歩く。なんとシュールな光景だろうか。




■バタバタ、バタバタ。

会場に近づくと入口に行列ができているのが見えた。
(うわー行列ができてるよ。やばいやばい)
お客さんたちは、すぐ後ろで今日の出演者たちが鶏ごぼう巻き丼を持って立っているとは思いもよらないだろう。表からは入れそうにないので裏口へまわり、控え室に入る。

交代で受付をやろうということで、まずは私が入口に座った。開場すると次から次へ、途切れることなく人が入ってくる。

お釣りが足りない。椅子が足りない。バタバタする、とはこのことだと思った。4人とも本当にバタバタ音を立てながら走り回った。大変なことになっちゃったな・・・。

銀行へ両替に走ったり、椅子を増やしたり、立ち見になる方に状況を説明したり。そうやってバタバタしているうちに刻々と時間は過ぎていった。7時の開演予定時刻から、20分ほども過ぎている。ごめんねお客さんたち!

交代で控え室に戻って立ったまま鶏ごぼう巻き丼を食べていたが、結局半分ほどしか食べられなかった。




■いよいよ開演。

そしていよいよ開演。一番手はキョート*ダンメンロシュツの吉永氏だ。こうやってお互いのスライドショーを見るのは、もちろん今日が初めて。吉永氏の軽妙な語りと共にダンメンが壁に順に映し出されていく。



やはり生で解説がつくとホームページを見るより面白い。あとでお客さんの感想を聞くと、やはり各サイトとも「ホームページより面白かった」と言われた。それはそれで複雑な気持ちだ。

二番手は私、日本ピクトさん学会。
今回のコンセプトは「分類編」。過去にホームページ上で紹介したピクトさんをジャンル別に紹介していくという趣向だ。「転倒系」「頭打ち系」「労働系」「工事現場」「地味〜にイヤな目に遭ってる系」「精神的ダメージ系」など、学術性及び一貫性に欠けた分類を披露していく私。



途中、でかでかと拡大されて壁に映るピクトさんを見ながら(なんなんだこのショーは)と心の中で自分につっこみを入れる。

そして最後、トリは住宅都市整理公団の総裁&長野氏。団地の二人は東京ですでにイベントを経験済みなので慣れたものだ。今回のテーマは「団地にキャッチコピーをつけてみる」。間違いなく、世界中でこの人たちしかやっていない試みである。二人のかけあいトークも面白く、私もいち観客として笑いっぱなしだった。



どのサイトのプレゼンもウケている。どうやらお客さんは楽しんでくれているようだ。よかった。

最後は4人でのトークショー。というか雑談だが、始まるまで特に打ち合わせはしていなかった。行き当たりばったりでしゃべり始めたのだが、4人いるので自然と話が弾む。



そして会場からの質問コーナー。私への質問では「ピクトさんを演じるとしたらどれを演じたいですか」というまったく予期せぬ質問も飛び出した。

どれも演じたくありません。


■DDP、大成功。

イベントが終了したのは、なんと10時過ぎ。2時間くらいで終わる予定だったが大幅に延びてしまった。みなさん、すみませんでした。

観客数は結局60人を超えていたそうだ。店内には二酸化炭素が充満していた。

Tシャツもほとんどが売れてしまった。買おうとする人に「だいじょうぶですか。もう一度冷静になって考えてください」と言ってみたが、「いえ、買います」という潔い返事が返ってきた。みんなどうかしている。

その後しばらくは、それぞれの読者と立ち話。私も今までメールでしか話したことのなかった方とお会いでき、うれしかった。

会場の後かたづけを済ませて、出演者プラス吉永さんの妹さんの計5人で近所のお好み焼き屋へ。私は当日帰るつもりでいたが、この時点ですでに諦めていた。店に入って、みんなで乾杯。ほぼ初対面のメンツとは思えない盛り上がり方で、結局解散したのは夜中の3時だった。

帰り際、「インターネットがなかったら生まれなかったイベントだね」と誰かが言った。

思えばインターネットとは、冷戦時代にアメリカの国防省が軍事利用のためにつくりだしたものだ。そのシリアスな発祥の由来と、今日我々がやったことの落差。こんなに無意味な利用の仕方をしてしまっていいのか。なんとなく情けない気持ちだが、まあ、少なくとも2004年秋の大阪中崎町は平和だったということだ。


人生万事、小児の戯れ。
福沢諭吉