メキシコ大特集
関西で演劇ライターをされているよし姐さんから、
「メキシコのピクトさん」が大量に送られてきました。 メキシコ旅行に行かれたんだそうです。 メールを読むと、ピクトさん1点1点にまつわる話が かなり面白そうだったので、 電話取材してじっくりお話を聞くことにしました。 ピクトさん以外の話も相当面白く、 気が付くと1時間半くらいしゃべってました・・・ というわけで今回、2ページにわたる大特集です。 Pの付いてるとこが私の発言です。 それではどうぞ。 ■死が身近にある国。 P「メキシコへは観光で?」 「グアナファトという町でセルバンティーノ芸術祭というのがあったんです。そこに維新派という関西の劇団が出演するということで、それを観るのが主な目的で」 P「グアナファトって世界遺産になってるところですよね。テレビでやってました」 「濃い街でしたよ。陽気で明るい人たちばかりなんですが、いつも近くに“死”があるという。ガイコツのキャラクターのお土産がたくさん売ってて」 P「メメント・モリ(死を想え)ってやつですね」 「そうです。ミイラ博物館っていうのがあって、それも見に行ったんですが、すごいですよミイラ博物館。ミイラって、要するに死体ですからね。乾いた死体がいっぱい並んでるわけです。たぶんダメな人は全然ダメだと思う」 P「よし姐さんは大丈夫だったんですか」 「何体か見てたら、すぐ慣れました」 P「はははは」 「途中から写真パシャパシャ撮ったりして」 P「ミイラの写真見せてもらいましたけど、これは掲載できないですよねえ」 「できないですよね。私も日本に帰ってきて現像してから、“よくこんなの平気で撮ったな”って思いましたもん」 P「その時はマヒしてるんだ」 「マヒしてます。気付くとミイラにマヒしてる」 P「キミの瞳に恋してる、みたいに言わないでください」 「言ってませんって」 P「この写真は?」 「これはミイラ博物館の入り口にあった顔ハメ看板です」 P「顔ハメ看板ってメキシコにもあるんだ!しかもミイラと一緒」 「入口からこれですから。マヒしますよ」 P「ミイラほんらいの意味がどっかいっちゃってますもんね。なんで一緒に記念撮影してるんだっていう」 「あとお土産に“ミイラ飴”が売ってました」 P「ミイラ飴!発想が日本の観光地と変わらないじゃないですか。ちょっと親近感が湧いてきました」 「私は食べなかったけど、リアルでしたよ。ミイラ色してて」 P「ミイラ色って(笑)。斬新な色の名前」 P「これがグアナファトの街ですか。すごい。行きたくなります」 「もう家一軒一軒が全部素敵で。町全体がフォトジェニックでしたよ」 P「ほんと。どこを撮っても絵になりそう」 「とにかく坂の多い町で」 P「そうなんですか」 「見てまわるのにとても疲れる観光地です」 P「現地の人は慣れてるんですかね」 「いや、見てると現地のおばあさんも、ゼイゼイ言いながら歩いてました。メメント・モリとはこのことか、と思って」 P「わはははは」 ■ピクトさんがスマート。 P「あ、ピクトさんの話も聞いておかないといけませんね」 「それが目的ですよね」 P「そうでした。いやあ、この写真いいですねー。空気が写ってますよ。メキシコの空気が」 P「バスに乗りこもうとしてるみたいですけど、どういうメッセージなんですか」 「これはバスの停留所以外の場所でバスに乗ってはいけませんよ、という意味ですね。向こうの人たち、道の途中でも平気でバスに乗り込むんですよ。バスの扉、開きっぱなしで走ってますから」 P「いきなり日本にはありえないピクトさんだ」 「でも全然意味なさそうでしたけどね。みんなガンガン乗り込んでました」 P「バスの運転手もそれを許しちゃうんだ」 「はい」 P「その向こうにいる、歩いているピクトさんはなんだろう。横断注意かな」 「なんかメキシコのピクトさんって、全体的にスマートなんですよ。これは非常口のピクトさんなんですけど」 P「ほんとだ!足が長い。国民性なんですかね。スマートでありたいという。世界のピクトさんの足の長さを較べてみると、何かが見えてくるかもしれませんよ」 「ついでにこれはバスの中です。あと写真には撮れなかったんですけど、フロントガラスにカタカナが書いてあるバスを見かけたんですよね。モレーリアという町で」 P「カタカナが?」 「ええ。言葉は全然デタラメなんですけど、カタカナが。フロントガラスを囲むように書いてあって」 P「デザインとして利用してるんですかね」 「たぶん。ドラクエの復活の呪文かと思いましたもん」 P「はははは!レベル30まで行ったぞ、みたいな?」 「そうそう」 P「なんでフロントガラスにメモるんだっていう」 「なくさないように(笑)」 ■ピラミッドピクトさん。 P「続いてこちらのこちらのピクトさんは」 「これはですね、テオティワカンという場所にある古代遺跡のピラミッドにいらっしゃったピクトさんです。一番下のピクトさん見てください。たぶん“心臓に病気のある人は登らないように”ということだと思うんですが」 P「心臓が割れてる!」 「これ大げさじゃなくって、ほんっとにキツかったんですよ。標高2000メートルくらいの場所にあって酸素は薄いし、ピラミッドの階段もかなり急だし」 P「よし姐さん頂上まで行ったんですか」 「行ったけど、もう死ぬかと思いました」 P「また出ましたね。メメント・モリ」 「もう一生ピラミッドには登りません」 P「うわあ。ほんとだ。これはすごいな」 「脱落者もたくさんいるんですよ。諦めて引き返す人が。途中で休んでる人もたくさんいるし」 P「なんでそこまでしてみんな登るんですか」 「そこにピラミッドがあるからです」 P「でも登り始めると後悔するという」 「そうです」 P「腰に手を当ててる外人さん、ちょっと心が折れてますよね」 「もうイヤになってますね。私も何度も引き返そうかと思いしました」 「これが頂上の写真なんですけど。向こうにお腹を出して寝ころんでる青年がいるでしょ」 P「わはははは!死にそうじゃん!」 「かなりへたばってました」 P「ミイラじゃないですよねこれ」 「(笑)」 「これは別の場所なんですが、登ってはいけないピラミッドがあって、そこにいらっしゃったピクトさんです」 P「これまたいいですねえ。ご当地ピクトさん。ここに行かなきゃ出会えないという貴重さを感じますもんね。もしピクトさん相場というものがあったら、かなりの高値が付くと思います。まあ、ないですけど」 ■ピクトさんの恋。 「こちらはグアナファトの看板。左上のC.DEL BESOというのは『口づけの小径』と呼ばれている場所で、この町の観光名所です。ものすごく狭い路地で、若い恋人同士が向かい合った家のバルコニーから毎晩キスしたという言い伝えがあるんですね」 P「言い伝えって。キスしたことが?」 「身分の違いで結ばれなかった2人の話なんです。最後、男の子のほうが殺されちゃうという悲劇の物語で」 P「ああ。このピクトさんはその伝説の2人を演じていると」 「そういうことです」 P「そう思って見ると実にピクトさんらしいピクトさんですね」 「悲劇ですからね」 P「左下のは?」 「これはよくわからないんですが、P.BARATILLOというのはちょっとした広場なんです。ここでも何か物語があったんですかね」 P「お嬢さん踊りませんか、みたいな格好してますね。あ、たしかにこのピクトさんも足が長い。スマート」 「でしょ。ここの広場にタコス屋台があって、私毎晩食べてました」 P「じゃあこのピクトさんは『タコス食べにいかない?』とか言って誘ってるのかもしれないですね」 「これが口づけの小径です」 P「わー。ほんとに狭い。小径じゃなくて隙間じゃないですか」 「ここ、カップルで行くと周囲の人からキスコールが起こるんですよ」 P「結婚式のパーティーみたいな?」 「そんな感じです」 P「でも最後、殺されちゃう話なのにね。日本だったら『縁起でもない』ってなりそう」 「そういうの気にしないんじゃないですか。メキシコ人は」 P「それもメメント・モリかな」 「これはパックアロという町のタコス屋台。ここのタコスが一番おいしかったです。いろんな場所でタコスを食べたんですが、けっこう味に差があるんですよ」 P「完全にメキシコの歩き方みたいになってきました。これからメキシコに行く予定のある方、タコスを食べるならパックアロですよ。覚えておいてください」 「下の写真は仲良くなったタコス屋さんです」 次のページへ |